「なにか、おかしい。いつもと違う…」 自分の身体の微妙な変化を見逃さないで! 子宮頸がん、卵巣がん体験談 7ringoさん
現代の日本では男女問わず、生涯のうちに2人に1人はがんにかかると言われている。そう聞くと、がんは「ありふれた病」のように思える。さらに、現代の医学では「がんは不治の病ではない」とも言われる。しかし、いざ「あなたはがんです」と告知されたら? おそらく狼狽する人がほとんどではないだろうか。
女性には、乳がんや婦人科がんなど、女性特有のがんもあり、治療法の選択次第によっては女性の尊厳にも関わる可能性も出てくる。中でも、子宮頸がんは、発症年齢が妊娠できる年齢層にまで広がっているため、発症すれば、がんを克服できるとしても妊娠や出産を断念せざるを得ないなど、その後の人生を大きく左右しかねない。
今回紹介する7ringoさんは現在45歳。夫と三人のお子さんのために、ふたを開けると思わず笑顔になるようなニコニコ顔のお弁当「顔弁」を作り、インスタグラムに投稿。闘病前はフォロワー8000人超のインスタグラマーとして活動していた(現在は非公開)。最近では、思春期に入った息子さんが「顔弁は恥ずかしい」ということで、お弁当に顔はつけていないが、愛情いっぱいの美味しそうなお弁当が、毎日ストーリーズを彩っている。
7ringoさんの「子宮頸がん」闘病年表
2018年(41歳)
5月頃 不正出血が続き、貧血で倒れる。
12月頃 円錐切除によるセカンドオピニオンで子宮頸がんが発覚。
ステージI期と診断を受け、手術をすすめられる。
2019年(42歳)
7月 腹腔鏡手術により子宮を全摘出。
手術により卵巣にもがんがあることがわかり、1/4を残して切除。
8月 子宮と卵巣の大部分を切除したことで急に更年期障害のような症状が出始め、
就寝時のホットフラッシュやイライラで悩む。
経皮貼付剤によるホルモン補充療法で症状は緩和。
2022年(45歳)
4月 担当医師より「今後は1年おきの検査で大丈夫」と告げられ、子宮頸がんを克服。
再検査でも不調の原因がわからず
セカンドオピニオンを受ける
7ringoさんが子宮頸がんの診断を受けたのは41歳の時だった。
7ringoさん:乳がん検診と合わせて、子宮がんの定期検診には行っていたのですが、子宮頸がんが発覚する少し前の検診から、必ず一度は引っかかって「要精密検査」になっていました。でも、精密検査に行くと「異常なし」。それが、2〜3回は繰り返された気がします。
ある時、生理じゃないのに出血する「不正性器出血」がおこるようになって、とにかく出血が止まらなかったんです。トイレに行くと生理じゃないのにポタポタ血液が落ちるくらい出血して。「なんかちょっとおかしいな」と思ったんですね。そのせいでものすごい貧血だったんですね。ちょうど子供が小学生で、学校にいるときに倒れてしまい、救急車を呼ばれたんです。頭を打ったから脳神経外科に運ばれたんですけど、血液検査をしたら貧血以外に異常はなし。
その時に、また同じ病院に子宮がん検診に行ったら、また「要精密検査」。でも、再検査ではやっぱり「異常なし」なんですよ。でも、「なんか、おかしい」「なんか、おかしい」という感覚はなくならなくて。
おかしいと思いながらも原因がわからず不安に思っていると、身近な知り合いが子宮頸がんにかかり、子宮を全摘出。退院後に話を聞くと、「あれ? 私も似た状態かも?」という感覚があったという。
7ringoさん:点と点が結び合わさってセカンドオピニオンとして別の病院に行こうと決めて、そこで初めて「円錐切除」という検査をしました。子宮頸がんは、子宮の入り口にできるがんですが、子宮の入り口は、筒状になってますよね。通常の検査では、子宮の入り口付近の細胞を採取するんですが、採取した場所ががん細胞に犯されていなければ「異常なし」になってしまいます。セカンドオピニオンで行った円錐切除は子宮の入り口の部分をぐるっと円錐状に組織を取る検査です。
セカンドオピニオンを受けた病院で、初めて円錐切除での検査をしたから、詳細に調べてもらうことができて、子宮頸がんであることがわかりました。今まで通っていた病院では、通常の検査しか行っていないのでずっと見つけられなかったけれど、病院を変えてようやく発見したときにはもう手術が必要な状況で。身近に同じ病気の経験者がいて、ざっくばらんに話ができたのも良かったんですね。もし何も知らなかったらセカンドオピニオンは行ってなかったかもしれない。セカンドオピニオンで円錐切除での検査を受けて良かったと思います。
子宮頸がんとは?
子宮の入り口である子宮頸部にできるがんのこと(イラスト参照)。子宮頸がんの大きな特徴は「発症原因」。ヒトパピローマウイルス(HPV)と言われる性行為により男女問わず感染するウイルスによるものとされている。免疫細胞からの攻撃を交わしたHPVが体内に長期間潜伏することでがん細胞に変化し、子宮頸がんに進行する。見つけにくい卵巣がんとは違い、検診のシステムも確立しているため、比較的早期発見が可能ながんとも言える。
子宮頸がんは、がんの進行により、7ringoさんのように不正性器出血が自覚症状として現れる場合もある。そのほか、性行後の出血、さらに進行すると悪臭のあるおりもの、多量の出血、腹部の痛み、血便・血尿、下肢のむくみが現れる場合もある。
ウイルスの感性を予防するためのHPVワクチンも開発されており、小学校6年生〜高校1年生相当の女性は、厚生労働省が定める無料の定期摂取が受けられる。また2020年12月より、一部のワクチンは9歳以上の男児・男性も摂取対象として承認された。
おもな婦人科がん
正しい知識を得れば
怖いことはない!
2年に1回の頻度で行っていた定期検診時には発見できなかったが、「なにか、おかしい」という自身の直感と不正性器出血が7ringoさんをセカンドオピニオンへと向かわせ、「おかしい」の原因が子宮頸がんであることがわかった。しかし、今度は「がん」という事実と向き合わねばならなくなった。7ringoさんは、どのように向き合ったのか。
7ringoさん:まず病気についていろいろ調べました。あとはインスタの癌サバイバーの人たちをフォローして、どういう経過をたどっているのかなとか、今の心情とか、そういうものを読み漁って。でも、「がん=死ぬ」というイメージしかなかったし、ネットで調べると怖いことしか書いてないんです。もちろん早期発見で治るがんもいっぱいあるとわかっているけど、当時、何もわからない状態でそれを読んでいたから、ただただ怖くなって「私、死ぬのかも」くらいのことを思ってたんですよ。「死」というイメージがずっと頭にありました。
まだ子供たちも下が小学生、中学生、高校生だったので、やっとここまで来て、これからっていう時に、「なんで私なんだろう」とか「なんでこんなことになっちゃったの?」と悲観的にもなりました。でも、いろいろ考えたときに、辛いことを乗り越えられる人にしか、こういうことは起こらないって聞いたことがあるし、家族が病気になったわけじゃなくて良かったっていう思いもあって。悪いものを全部取って来ようと思って手術を受けました。怖かったけど、ちゃんと処置をして、正しい知識を得れば怖いことは何もないかなと思いました。
10日間の入院で、腹腔鏡手術により子宮を全摘出。手術により卵巣にもがんがあることがわかったため、卵巣の1/4を残して切除した。
7ringoさん:術後、すぐはドレーン(体内に貯留した血液・膿・浸出液を体外に排出する管)がついてますけど、それを取り外してから自分でトイレに行かなきゃならなくなっても、尿意がまったくわからなかったんですよ。尿意を感じた瞬間にはもう出ているという状態で。子宮を取ったせいで、尿を止めるための筋肉が鈍くなってて恥ずかしいし、申し訳ないし、嫌でしたね。それで、母に、大きめの尿もれパッドを買ってきてもらって使っていました。
あと、病院って、同じ病気で入院している人だけならいいですけど、大部屋になるとさまざまな人がいるじゃないですか。私の場合は、婦人科病棟が満床で産科病棟に入れられたんですよ。だから、同室にはこれから産む人と出産後の人が一緒で。夜寝ていると、赤ちゃんも同室だったので、夜中、泣き始めて授乳もはじまるわけですね。こっちは子宮を全部取る手術で、赤ちゃんを産む予定はないけど、今まで、大事にあったものがなくなってしまった喪失感に襲われて、一人でしょんぼりしているじゃないですか。それは悲しかったし辛かったですね。
術後の不調を乗り越え
毎日笑って過ごしています!
退院後は、子宮と卵巣のほとんどを切除したことでホルモンバランスが乱れ、更年期のような不調が待ち受けていた。
7ringoさん:今、45歳ですけど、42歳の時に急に閉経したせいで更年期の不調が現れたということですね。それが結構しんどくて。辛かったのは就寝中のホットフラッシュです。日中はなんでもないんですよ。でも、眠っていると滝のような汗でべちょべちょになって起きるんです。夜中に2回くらい着替えが必要という感じで。それで寝不足になり、イライラもして。それで調子悪かったですね。無気力にもなったし。卵巣は1/4ほど残っていたんですけど、本来であれば、少しでも卵巣が残っていれば、ホルモンがちゃんと出るみたいなんですけど、ホルモンの量が少ないということで、二週間おきにホルモンのシールをお腹に貼るホルモン補充療法をしました。今は落ち着いています。
まさについ最近の検診で、「もう1年おきの検査でいいですよ」と担当医からも言われたという7ringoさん。
7ringoさん:子宮頸がんも克服したと言ってもいいと思います。若い人にとっては婦人科を受診することはハードルが高いかもしれないけど、定期検診には必ず行くべきです。リンパに転移するような…例えば、乳がん、子宮体がんも足の付け根のリンパに転移してしまえば、すごく大変な治療になると思うんです。でも、子宮頸がんのように、その器官をゴロっと取ってしまえるものに関しては、私のように早期発見で放射線治療にまで至らないケースもあるんですよね。それと自分の体調に敏感になって、「おかしい」と思ったら、定期検診で異常がなくてもセカンドオピニオンを受けることは絶対におすすめしたいですね。
子宮頸がんを経験し、7ringoさんがより強く感じたのは「明日何が起こるかわからないのなら、毎日を楽しくすごそう!」ということ。スノーボードという新たな趣味も見つけ、冬の間はお子さんたちとスキー場に通っている。「すごい頑張って練習しているんです」というだけに、腕前もなかなかのもの。インスタグラムは現在非公開だが、ストーリーズへのお弁当の投稿は欠かさない。
7ringoさん:病気に限らず、生涯のうちには何が起こるかわからない。毎日、毎日、過ごすなら、楽しいこと、好きなことをやったほうがいいと思うんですよね。病気をしてから、なおさらそういう風に思います。いろんなことがありますけど、楽しんでますね。
そもそも私は笑顔が好きで、お昼にお弁当箱の蓋を開けた時に、笑った顔があったら、食べる人も笑顔になってくれるだろうな、笑っててほしいなという思いで、お弁当にニッコリ笑った顔ををつけるようになったんです。面白くなくても「アハハ」って笑っていれば、がん細胞を殺すNK細胞が活性化すると言いますから、毎日、思いっきり笑っています。今は子供たちが大きくなって、顔弁にすると恥ずかしいと言うので、お弁当には顔がないんですけど、ストーリーズに投稿するときは自分でニッコリ顔を描いてます。これからも、自分も笑ってなきゃダメだなって思いますし、ニッコリ顔のお弁当をストーリーズにアップしようと思っています。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。症状などは人によっても異なるため「おかしい」と思ったら婦人科医へ相談しましょう。また、年に一度は定期検診に行きましょう。
【7ringoさんのお弁当や作り置きおかずが掲載されている本】
「わたしたちの『お弁当』」
(マイナビ出版)
わたしたちの編集部
1,566円(税込)
【参考にした書籍】
「最先端治療 子宮がん・卵巣がん」(法研)
国立がん研究センター中央病院 腫瘍内科、婦人腫瘍科、他編著
2,750円(税込)
「子宮頸がん」「子宮体がん」「卵巣がん」などを中心に、婦人科がんの基礎知識、国立がん研究センター中央病院で実践されている最先端治療をわかりやすく解説。治療後の経過観察や再発時の治療についても丁寧にフォローしている。
構成・文:大橋美貴子 「顔弁」写真:7ringo イラスト:すずきさえこ
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